雨唄*誘惑の毒


「瞬!ちょっと!」

「ついてこないでよ」

「どーして…おかしいよ、どうしたのよ?」

瞬は俯いた。

「ボク、ルナが好きだ」

「えっ…」

「だから今は…一人にして。」

わかってた。
月があの人と帰ったあの日から、ずっと。

あの日、僕は雨宿りをしていた月を見つけて傘に入れようとしたんだ。
だけど、僕はドジだから傘を開けるのに時間がかかった。
結局、その傘は壊れているのに気付き、ボタンを開けたまま傘は開かず、月に話しかけようと思った。

もう遅かった。

あの人に先取りされ、僕はその場から動けずにいた。

酷くなっていく雨と共に、二人の姿を見ていたんだ。








「離してください」

「冷静だな、お前」

「すみません。争い事は嫌いなんです、自分の意思を伝えればそれで終わりです」

「へー。俺も自分の意思を伝えればそれでいいんだな、じゃあ俺は離さない」

「いや、そーいう意味ではなくて…」

「んだよ、自分勝手な奴だなぁ」

イラッときた。
じゃあ離せよ、と。

「でも、月のそーゆうとこ…結構好きかも。」

「今、なんて?」

「いーや、なんでも」

誤魔化すかのように、咳払いをする。

「じゃ、じゃあ俺は帰る。バイバイ」

は?自分勝手なのはあなたもじゃん。
ま、今回は許してあげる。