【完】隣の家のオオカミさん



「ありがとうございました」


作り笑顔もだんだんと上手くなってきた気がする。

でも無理やり笑うのって疲れるなぁ。


レジの中にお金を入れようとしていたその時、声をかけられ勢いよく顔を上げた。


く、クレームかな…
なんだろう。対応できるかなわたし。



「はい、これあげる。頑張ってね」



ニコッと笑ってその男の人はお店を出ていった。


あめ玉ひとつ残して。


偶然にも出勤前にわたしが舐めていたのど飴と同じ種類。


優しすぎる。
あんないい人いるんだなぁ……


あめ玉をそっとポケットの中に入れて、何度も心の中で感謝の言葉を呟いた。