根性がないと思われたくなかった。
やればできるじゃんって認められたかった。
逃げたくなかった。
だから、ここで辞めるのはダメだと自分に言い聞かせてたの。
やっと見つけたバイトだし、生活費のためにも稼がなくてはいけない。
「お疲れ様です、お先に失礼します」
誰の顔も見ないで深く頭を下げ、逃げるように店を出た。
夏のひんやりした空気に包まれながらぼーっとする頭で帰路につく。
お金を稼ぐってこんなにも大変なことなんだね。
こんなことで弱音吐いてちゃダメだとは思うけどさ…
「おい、日向子。俺の存在忘れてただろ」
上から降ってきた声に顔を上げた。
勢いよく顔を上げたせいか目の淵に溜まっていた涙が頬を伝う。



