【完】隣の家のオオカミさん


少しの段差にも気づかずにわたしはブーツの先を引っかけてしまい、転びそうになる。

バランスをなんとか保てたけど……一瞬焦った。


前を歩く千絵は気づいていない。

うん、よかった。


なんか、これは本格的な風邪なんじゃないだろうか。

歩くのがやっとなんて、これはやばいと思う。


フラフラするよ~……



「日向子」



声に振り返ると視界が歪んだような気がした。
今は頭をあまり動かさないほうがいいのかもしれない。


「ん……? あれ、大上くん?」


「お前、顔赤いぞ。目も赤いし。どうしたんだよ……って、おいっ!」



意識を手放す前に目に映ったのは大上くんの焦ったような顔。

耳に残る聞き心地のいい声。


大上くんに向かって手をのばして倒れ込むとプツリと記憶がここで途切れた。