※公開終了間近! イロモノなアタシ

ちょっとの沈黙で、すぐに話題が元通りになる。


「シホちゃんはさ、すごく気が利くし、優しいから」
「そんな優しくないです」
「最初に出会った時もそう、俺がつまらなさそうにしてたから気を使ってた」


あれは単に営業マニュアルにもあるし、お水の心得だ。


「会ううちに、男だって思ったけど踏み止まれなくて、やっと今日分かって言えたんだ」
「でもつりあいが取れないし」


こんな都合のいい話なんて、それこそマンガの世界だ。


イケメンがブスに惚れるなんて、まず有り得ない。


まあ、前の彼女が美人でヒドイ目に遭ったとかなら分かるけれど、鳴瀬さんは前科が無い。


「そんなの気にしなくていい、正直に気持ちを聞かせて欲しい。だから、また今度会おう」
「は、はい」


これまでの人生で、一番幸せだけれど複雑な気分。


それを抱えたまま、鳴瀬さんの車で家に送り届けられた。


助手席に座っている間も何となく彼女の様な気分で、付き合いたいと返事をしてしまいたくなったけれど、我慢する。