「まーた暗い顔して」


蘭子さんがタバコを片手に、あきれた顔をするロッカールーム。


「どうしたの? ナルちゃんと上手く行ってない? 」
「友達の事なんですよ、絶交しちゃって」


この言葉を聞いた瞬間、大爆笑されてしまった。


「ハタチ過ぎて、女子高生みたいなセリフ言わないでよー」
「でも、親友なんです。それに……」
「はいはいはーい、そこまでー。店が終わったら『ZUKA』で聞くから。シホちゃんは、バイトでもプロなの、さあ笑顔! 」


唇の端を両指で持ち上げ、笑顔を作られた。

そうだ、仕事だ。


店内に出ると、あたしは皆を笑わせないといけない。


「シホちゃん、最近キレイになったんじゃない? もしかしてぇー」
「実は、3日前のカニ食べてー、やっちゃいましたぁー」
「食い意地張ってるー、おじさんてっきり恋でもしてるのかと思ったよ」「鯉は未経験だわー、今度、ごちそうして下さいよぉー」


こんなつまらないギャグしか出ないよ、ああ。


クミさんも、あたしの様子に気づき、急いでフォローに入る。


「クミも恋したーい、って言うか、お嫁さんになりたいでーす」
「お嫁さんて、じゃ、俺が立候補しよーかなー」