そんな時、アナウンスが流れる。


「やって来ましたシャングリラ恒例ショーターイム! 本日のショーはすばり『ウェスタン』どのお馬さんに乗っちゃうかは、ヒミツだぞぉー」


蘭子さんはショーのために席を立ち、ステージへと向かって行く。


軽快なハウスチューンのカントリーが鳴り響き、カウボーイスタイルのダンサーが登場して来る。


「イヤッハー! 」


練習に練習を重ねたステップは軽快で、こちらの席に居る人たちも真剣な表情で見入っていた。


ステージの上では、馬に見立てたステッキを股に挟んで振り回し、ちょっと卑猥な動きをしている蘭子さん。


「楽しいですか? 鳴瀬さん」


騒音にまぎれて、そっと話しかけると彼は困った顔になる。


「うん……」
「ここの名物なんですよ、ショータイムって」
「あのさ、君、名前なんて言うの? 」
「は? 」


自己紹介を聞いていなかったのだろうか、仕方なく名刺を出して名前を教える。


「シホです、ヘルプの」
「ヘルプって指名出来るの? 」
「蘭子さんを指名してくれたら、一緒に来ますけど」


他にも可愛がられている人が居るが、今日、鳴瀬さんに最初のホステスとして付いたのが蘭子さんだから。


これは水商売の鉄則、ヘルプは何事も自分の上を通さなければならない。