大学生のとき、同じ大学にすごいイケメンがいると噂になっていた。
私はその頃、なるべく目立たないようにそういうことからは避けて生きていた。
人を信用できなくなっていたのかもしれない。
大学にあまり人が来ない大きな木がある中庭があって。
私は時間を見つけてはその木の下でひっそりと本を読んでいた。
ある日、徹夜でレポートを作成していた私は、うっかり寝てしまったのだ。
しばらくして、前に人がいる気配を感じて飛び起きた。
昔からそういうことには敏感だった。
いつ秘密がバレて狙われるか分からない私にとって、それは当たり前に叩き込まれた処世術。
「誰!?」
そう言って目の前の人物を睨んだ。
するとその人は驚いたのかビクッとして尻餅をついた。
「え…っ? 起きた?あれっ? えっ、あっ俺はそのっ、経済学部3年! は、長谷川亮介ですっ!!」
それが、りょうとの出会いだった。