「……何で…」
私が呆然と動けないでいると、りょうが抱きしめる力を強めて話してきた。
「ごめん。家の場所は、尾行した。普通に訪ねたら入れてくれないと思ったから」
そう言ってりょうは私の肩口に顔を埋め、動かなくなった。
私をあまり意識せず、人の流れにそって尾行すればいくら私でも気づかない。
昔、りょうに護身術を教えたとき自分で言ったことを思い出した。
「……あのね。この前、うちの事務所に榊原さんが来たんだ。社長と長いこと話し込んでた」
「榊原………」
あの人たちが、話を?
でも、いったい何を……
「葵のこと、真剣に考えてたよ。どうするのが一番葵のためなのか」
「……私………?」
