日陰より愛を



私は半ば逃げるように店に戻った。


「おや、おかえりー……っと」


「おばあちゃん……」


おばあちゃんの顔を見たら気が緩んでしまって、ついポロポロと涙をこぼしてしまった。


「……あの人は、葵ちゃんの大切な人かい?」


そう言っておばあちゃんがにっこり笑うから、涙が止まらなくなった。


おばあちゃんが何も言わずにそっと私を抱きしめる。


私より身長が低いけど、暖かく包み込まれてるような気がした。


「あれっ! 葵ちゃんどうしたぁ」


店の奥からおじいちゃんが出てきて驚いた声をあげる。


「葵ちゃんも女だってことさ。じいさんには分からないからいいんだよ」


「なんだい、そりゃ」


2人の会話を聞いていたら自然と笑顔になってしまう。


「あははっ、2人ともおかしいです」


そんな私を2人はほっとしたように、暖かい目で見つめていた。



















「おつかれさまでした」


「また明日なぁ」


夕方、店を出て家路につく。


いろいろあったけど、ある意味吹っ切れた日だったのかもしれない。


思いっきり泣いたこともあって、どこかすっきりした気分で家についた。


こじんまりしたボロアパート、これが今の私の家。


これくらいが私にはちょうどいいのかもしれない。


おばあちゃんたち優しい人にも恵まれている。


「小さな幸せってね」



ふっと小さく笑って鍵を開けドアを開けた、そのとき。


――――ザッ


後ろに迫る気配に気づいて咄嗟に振り向こうとしたが、相手の方が一瞬早かった。


「っ!?」


後ろから口をふさがれ、羽交い締めにされて部屋に引きずり込まれる。


「んー!?……っ」