ありがとう、りょう……。
私は泣きそうになるのをコーヒーを飲んでごまかした。
あなたと同じ、砂糖とミルクたっぷりの。
……いつだってあなたは私を幸せにしてくれるね。
ここで素直に頷ければ、どんなにいいか。
……でもね。
そんなあなただから、私は巻き込みたくないの。
「……長谷川さん」
私の秘密が明るみに出た今、あなたの側にいるわけにはいかない。
事務所の社長の隠し子と付き合ってるなんて、格好のネタになる。
「私はもう、あなたのことはなんとも思っていません」
「……葵っ……!!」
小さな、悲鳴にも似た声で私の名を呼ぶ。
やめて。
そんな声で呼ばないで。
唇をぐっと噛み、涙をこらえた。
席から立ち上がり、去り際に一言言い放つ。
「二度と、私の前に現れないでください」
彼がひゅっと息をのむ音がしたが、振り返ることはできなかった。
――――ばいばい。
大好きだったよ、りょう。
