……結局、失ったのは私だけ。


違う家族を持った母親に、自分の居場所をつくることを諦めた。


自分の夢も諦めたが、代わりに託したりょうの夢が叶った。


しかし、そのりょうを失った。


やっと自分で手に入れた仕事と、尊敬できる先輩を最悪の形で失った。


ないない尽くし。


しかし、それを何とも思わない私がいた。


最近ではりょうをなにかしらの形で見かけても胸を痛めることはない。


それは、私が全てを諦めたから。


結局のところ、産まれたときから普通の人生を送ることは不可能だったのだ。


分かりきっていたことなのに。


今になって、ようやく実感したのかもしれない。


今までは心のどこかで望んでいた。










――――こんな特別はいらない。
ただ、普通に生きたかった。