「……思い出しました。彼女が役者を目指したことがあると話していたことを」


そのときは何とも思わなかった。


『私は日陰が似合う女なの』


あの言葉にはもっと深い意味があったんだ。


「葵は、あなたたちのことが露見しないために夢を諦めるしかなかったんだ」


諦めることは得意。


それは、彼女の口癖だった。


いったいどれだけのことを諦めてきたのだろうか。


……いや、諦めなければならなかったのだろうか。


「……葵……」


俺は、どれだけ彼女を傷つけたことだろう。


優しく、穏やかに微笑んでいた彼女。


『りょう、大好きだよ』


「……葵……っ!!」


俺は、馬鹿だ。