ある日、りょうの事務所の人が私のことを訪ねてきた。


話を聞かなくても要件は分かった。


人気絶頂のりょうに恋人がいるというのは致命的な問題だから。


私もそう思う。


それによって彼の仕事に影響を及ぼすことは、私にとっても不本意だ。


ずっと、覚悟していた。



「これはお願いではなく、命令と思っていただいた方がよろしいかと。こちらもそれ相応の対応をさせていただきますので」



そう言われて差し出された厚みのある封筒。


私はそれを無言で見つめた。


大丈夫。諦めることには慣れている。


大丈夫。



「こちらの意味、理解していただけますね? 彼のためです」



私は黙ってそれを受け取った。