一瞬驚いた顔をした男は、すぐに返事をした。
「いつも朝に俺ん家の前を通るのを見てるからな。て言っても、俺の部屋がちょうど道路側だから見えちゃうって事。」
「そういうことですか。さっきはありがとうございました。では私はこれで。」
敬語は慣れない。だって普段敬語なんて滅多に使わないから。
そう言って帰ろうとした時…。
「俺は夜桜蓮！！！お前は？？」
一瞬戸惑ったが、すぐに返事を返す。
「聞く必要はない。」
あーあ。またやっちゃった。
まあ、いつもの慣れだね。
「俺は今お前を助けたんだ。少なくともお前と俺の間には一つの繋がりができた。聞かない理由は無いと思うぜ？」
なんか口調さっきと変わってる。
まあ、いっか。
「人との繋がりなんていらない。どうせすぐに切れるんだから。」
「んなこたねぇよ？少なくとも俺はな。」
「人間なんて、皆一緒。それじゃあ、さよなら。」
そう告げて歩き出す。
しかしそれは叶わなかった。
だって、男が私の腕を掴んだから。
「触らないで。離して。」
「離さねえよ？名前を教えない限りな。」
「教えるつもりはない。」
「あそ。じゃあ一生このままだな。」
めんどくさいなあ！！！
「白蓮。」
「は？」
「貴方が聞いたんでしょ。私の名前。白雪白蓮。」
「あ、あぁ…。」
「なに？」
「いやぁ、やけに素直だな、っと思ってな。もうちょい手こずるかと思った。」
「貴方がうるさいからでしょう？じゃあ、約束通り離して。」
「ああ。」
パッと手が離れる。
スタスタと歩き始めた時、
「じゃあな！！白蓮！！」
横目でチラリとみて、また歩き出す。
始めて会ったな…。あんな奴。
まぁ、もう会うこともないだろう。
さ、帰ろ帰ろ。何にしろ殴られなくてよかった。