なんでも知っていてなにも知らない君。
君はよく笑って…
よく泣いて…。
君は泣くことしか知らないのか
君は笑うことしか知らないのか。
君は……
ある夏。
普通の夏。
誰もが暑さのあまり嫌ってしまいそうになる
可哀想な夏。
僕は図書館に通うのが日課になっていた。
本?そんなの読まない。
図書館の地球に貢献した遠慮がちなクーラーを
目当てに毎日通っているのだ。
ほら、見てごらんよ。
たいして本を読んでる人なんていない。
僕はいつものように大きな窓の左側にある
一番涼しい場所に座った。
……それにしてもすることがない。
受験生のくせになにをやっているんだろう…。
せっかく図書館に来たんだから一度くらい
勉強してみようか、そう思いすかすかの鞄のなか
から参考書を取り出してみた。
ただ取り出しただけ、それだけなのに
自分偉いなと思っていることが情けない。
ふと窓の外を見てみる。
こんな暑いなか手をぎゅっと繋いで歩く
かっぷるが1…2…3組ほど見えた。
自分はほんとになにをしているんだろう…。
学生にして経験ゼロ。ちゅーやはぐは
もちろん手も握ったことがない。
自分の経験のなさがすばらしく思えた。
「もう、諦めようか…。勉強だ、勉強。」
だれにも聞こえない声で呟いたつもりでいた。
が……
「なーにを諦めるの?」
年上だろうか…いや年上だ。
女子大学生が話しかけてきた。
びっくりするような澄んだ声、
思わず呼吸の仕方を……忘れた。
「ここ座るね」
その人は僕の前に座った。
座っていい?じゃなく座るね、と言って。
そして両肘をついて手の上に顎をのせて…
「こんにちわっ」
そう…言ったと思う……。
大きな瞳をころころっところがして、
広角を少しあげていたずらっぽく僕を見る。
ずっと、少しもそらさずに。
声が…でないかもしれない。
どうしてだ?今どんな感情なんだ?
それすらわからない…
…この夏……2013年の夏、
君は僕を壊した。
