NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】

……なぁ、willの後って動詞ないとおかしいよな」


英作の時間、一応机はくっつけるが、作業は自然別々になる。


周りはがやがやとしているが、無愛想人間の二乗でなごやかな空気が生まれるはずもない。


「……当たり前でしょ」


意外と女の子らしい、可愛らしさすら感じる声質。


しかしそれを凌駕する愛想のなさ。


「……だよな」


すみません、と心の中で小さく謝った。


手入れをさほどしていないであろう、肩までの黒髪が、そっけなくはねている。


ナミダの金髪と並べると対照的だ。


低い声で唸りたいのを抑えていたナミダの目に、ふと遠藤の机の端に置いてある文庫本が映った。


「なぁ、それ好きなの」


何回も読まれているのだろう、端がかなり擦り切れている。


指差すと、遠藤もそちらに視線をずらし、こくりとうなづいた。



「うん、好き」


「………俺も」


言うと、ナミダを振り返った遠藤の目がわずかに見開かれた。


「うそ」


「いや、んな嘘つかねぇし」


文庫化される前から読んでいる、ナミダの好きな小説の一つだ。


「だって、本とか読まなさそうじゃん」


「いや、読むし。昼休みとか隣で読んでるだろうが」


そういやぁ、そうだっただろうかと、遠藤は首を傾げた。