NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】

小さな頃のナミダは、笑顔のキラキラした子供だったらしい。


父やら祖母やらから聞いた話でしかないが、やたらにこにこしていたのはなんとなく身に覚えがある。


子どもは無垢であると、その言葉を体現したような子どもだった。


今の無愛想が形成され始めたのは、いつ頃だったか。


気づいたらこんな風になっていたとしか言いようがない。


「昔はおとぉさーんって笑顔全開で駆け寄ってきてすごい可愛いかったのになぁ」


面白がってそんなことをいう父の頭をぽかんと叩いた。


いったいいつの時代の話をしている。


今現在、自他共に認める無愛想野郎となりはてたナミダだが、こいつには負ける、と思う奴が一人いる。


その名も遠藤 知恵。


隣の席の女子だ。


とりあえず、遠藤は笑わない。


顔にはいつもめんどくさいと書いてある。


そんなんだから当然のごとくいつも一人で、でもそれを苦痛に感じている様子はまるでない。


ナミダも進んで人に干渉する方ではないので、積極的に話しかけてみようと思ったことはない。


しかし隣の席に座っているわけで、必然的に関わりをもたざるを得ない。


たとえば授業の一環で、一緒に英作をしたり、数学の解法を作ったり。


女子は隣が遠藤になると大抵嫌そうにする。


一緒にいたって楽しくないじゃん、というわけだ。


ナミダには別に、そういう感情はなかった。


むしろついていけないハイテンションに付き合わされるよりはだいぶ良いとさえ思った。


しかし、遠藤は想像以上に手強かった。