NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】

家への帰り道、何気なく視線を滑らせた先になにやら見覚えのある人物をとらえて、ナミダは微妙な顔をした。


なにやってんだ、あいつ。


近所の公園。


公園とは名ばかりで、遊具はひとつもなく、ベンチがそなえてあるだけ。


その若干錆びついたベンチに腰掛けている背中は、まごうことなく父親のものだった。


しかし、父は一人ではなく、三人の柄の悪そうな奴らに囲まれていた。


カツアゲされそうになっているらしい。


父が恐縮しているのが、表情が見えなくてもよく分かる。


ナミダはゆっくりと、彼らに近づいていった。


「なぁ、おっさん。ちょっとお金くれるだけでいいんだよ。大丈夫返すから」


そんなわけは、もちろんないだろう。


ナミダはすぅーっと息を吸い込んだ。


「あのぉ、すいません」


話しかけると、彼らは案の定三人ともが振り返る。


「やめた方がいいと思います、そういうの」


「………なにお前」


彼らが威嚇するように近づいてくる。


こんくらいで十分だろうという距離で、ナミダは父親めがけてぱっと走り出した。


「走るぞ」


父を無理矢理立たせ、一気に逃げ出す。


後ろの方で何か聞こえたけど、追いかけてくる気はないらしい。


公園が跡形もなく見えなくなったところで、ナミダはようやく立ち止まり、父の手をはなした。


父はと言えば、真っ赤な顔で荒い息をしている。


おっさんには少しきつかったらしい。


「なにやってんだよ、あんなやつらにスキみせて」


「はぁはぁっ、いやー、助かったよ本当。さすがナミダ、父さんの救世主」


さっきまで縮こまってたくせに、もうこの調子だ。


いつもと同じように笑う父親に若干イラッとした。


「俺まで顔覚えられたじゃねぇか。今度会ってぼこぼこにされたら、父さんのせいだからな」


「……すみません」


しょんぼりと謝る父に、小さくため息をついた。