「でれでれ?」

「そう、でれでれ。でぇれでれ」

楽しそうにふしまでつけて歌う凪人に、ナミダは顔をしかめた。

「なんで俺が遠藤にでれでれするんだよ」

「知らね」

凪人は心底愉快げだった。

ナミダとしてはいまいち納得がいかなかったが、確かにそうなのかもしれない。

だからと言って、遠藤との関係性に自分が変化を求めているとは思わない。

今のままが、心地良い。

少女漫画の世界では許されないだろうが、日常の安らぎを現状に求めることが、悪い事とは思えない。

これと言った悩みも抱かないまま、ナミダは残された青春を享受したかった。