「あー、やっと来た。金髪少年め」


戻ってみると、まるで時間など経っていないかのように、遠藤と凪人は待ち合わせ場所にいた。


しかし、ばっちり時計の針が進んでいる証拠に、凪人が無表情のまま、嫌味ったらしい。


「俺らずぅと待ってた。何してたんだよ」


「あー……うーん、本屋巡り…?」


「……勝手だなぁ」


凪人は呆れるだけで、特に怒ったりしなかった。


ここがこの幼馴染の不思議なところだ。


怒って当然のところで怒らない。


だからと言って、感情の起伏にとぼしいわけでもない。


「なんか、いい本あった?」


遠藤も怒っていなかった。


まるで待ちぼうけの時間を感じさせない。


そして無類の本好きらしく、こんな質問をしてくる。


「…うん、いっぱいあったよ」


小雨になった雨の音がぱらぱらと景色に滲む。


くすんだ光景に、ふわりと遠藤の笑顔が咲きこぼれた。


かわいい。


言い訳できないほどはっきりと、一つの単語が頭の中で瞬いた。