NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】

「あーっ、ナミダくんだ。久しぶり」


店の奥から中学生くらいの男の子が出てきた。


ナミダの姿を見つけると、嬉しそうに駆け寄ってくる。


「おー、凛太朗。久しぶり」


にこにこと無邪気な笑顔を向けてくる彼はここの店長の甥っ子だ。


「ずっと会わなかったね。ナミダくん滅多に来ないし、俺も最近来てなかったし」


凛太朗はしょっちゅう店の手伝いをさせられている。


男の子がぷりぷりしながら中年の男を叱る姿がちょっと前まではよく見られていたのだが。


「そっか、お前今年、高校受験だ」


「うん、ぼちぼち勉強してる」


苦笑いする顔はまだずいぶんと幼さを残していたが、前に会った時よりだいぶ背が伸びているように思う。


ナミダは親父のような心境になって凛太朗の頭を撫でた。


「ま、ぼちぼちがんばれ」


「うん、がんばる」


中3にしてここまで素直なやつはなかなかいない。


「古本市から避難してきたの?傘ないなら貸すよ」


「あー、いい。いつ返せるかわかんねぇから」


凛太朗はそっか、とあっさり引き下がると扉の前で、じゃあねと手を振り、店の外を出ていった。