NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】

商店街は雨から避難してきた人で混雑していた。


ざわめきにかき消されて雨の音が聞こえない。


残念だ。


雨に濡れるのは嫌いだが、雨音は嫌いじゃないのに。


この商店街には二つの本屋がある。


一つはいつの時代の遺物だと言いたくなるような古臭いうえに埃っぽい古本屋。


もう一つはこの地方で展開しているチェーン店だ。


清潔なのに越したことはないが、自動ドアを入ったすぐのところで小さな子供に怯まれて、数秒で店を出てしまった。


金髪も考えものだ。


久しぶりに古本屋に入ると、レジに座っているのが金髪の女で笑ってしまいそうになった。


活字など無縁に見える彼女はしかし、ほんとに仕事してんのかとツッコミたくなるくらいに手の中の文庫本に熱中している。


「らっしゃい」


いちおうナミダが入ってきたことは認識したらしく、気のない声が店内の空気を震わせる。