NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】

「……よし、五時になったらここに集合だ」


「おう」


「うん」


自転車置き場を待ち合わせの場所に指定する。


はなから一緒にまわる気がないのではなく、はぐれる可能性大のため、一応最後には合流できるようにしておく。


これはナミダと凪人の昔からの決まりだった。


言ってしまえば凪人のお父さんの受け売りでもある。


ナミダはともかく、凪人は夢中になると他人の動向を気にしないところがある。


遠藤もおそらくその類だ。


安全策はとっておくに限る。


「………結構人いるね」


ぽつりと言う遠藤に、


「今日は少ないほう」


と答えると、そうなの、の小さな声が返ってきた。









空はあいにくの曇天だったが、ナミダは古本市の時はこのくらいの天気が好きだ。


胸の奥がざわざわと高揚してきて、思いっきり叫びたいような気分になる。


もちろん、雨は御免なのだが。


周りには雑多な人混みと、無秩序に並べられた本の数々。


久しぶりに嗅ぐ古本市独特の匂いがする。