結局ナミダが折れて、家まで送ってもらうことにした。


若干情けない気がしないでもない。


ワインレッド色の小さめな傘はナミダが持っている。


ナミダは遠藤が濡れないように少し傘を傾けつつ、自分より幾分か小さな肩を見下ろした。


なだらかな曲線を描く肩は華奢だ。


周りから見ればどう考えてもカップルだよなと今更ながらに思う。


遠藤はそういうことに頓着がないんだろうか。


なさそうだ、と勝手に結論を出す。


「君の家はどのへんなの?」


「ああ、右小のすぐ近くだよ。……あのさ、その『君』って呼ぶのやめね?ナミダでいいよ、ナミダで」


言うと、遠藤は少し目を丸くしてナミダを見上げた。


「いいの?」


「いいに決まってるだろ。名前は呼ぶためにあるんだから」


遠藤は珍しくおずおずとした様子でうなづくと、雨の音にかき消されそうな小さな声で、ぽつりと呟いた。


「……ナミダ」