NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】

「学校は楽しかったか」


毎日毎日、小学生相手がお似合いの質問をしてくる父に、ナミダは、はいでもいいえでもない曖昧な唸り声で返す。


「こら、膝たてないの」


祖母にぴしゃりと注意されたのはナミダではない。


「へへ、ごめんなさい」


中年のおっさんである。


これもまた幾度となく繰り返された応答ではあるが、父が自らを律するところは見たことがない。


「今日はナミダの好きなハンバーグよ」


祖母が優しくナミダに微笑みかける。


ナミダには、特にハンバーグが好きだという自覚はないが、大方小さな頃の自分が好きだと言ったのだろう。


祖母の中のナミダはいつまでたっても可愛い小さなナミダだ。


ナミダの家では、夕飯は必ず家族で食卓を囲む。


中学生の頃、夜遊びをしてかなり帰りが遅くなることもあったが、祖母と父はある意味執念でもってナミダの帰宅を待っていた。


すっかり冷えている三人分の夕食を前に、何やら気まずい思いをしたものだ。


おそらく大人二人は分かってやっていたのだろう。


お前が帰ってこないと家で腹を空かせて待ってるやつがいるんだぞと。


結局言葉では一度も夜遊びを咎められたことはなかったが、高校に入ってからは、おとなしく帰宅するようになった。


「母さん、お茶取って」


「自分でとりなさい」


「えー」


ナミダには甘々の祖母だが、自分の息子には甘くない。