*変わってしまった彼*


幸香side


女は化粧することを、楽む生き者だと思っていた。


ファンデーションで、肌を白くしたり…
チークで、頬の色を変えたり…
アイシャドーで、目元を輝かせたり…
口紅で、唇を潤したり…

魔法みたいに変わる自分の顔を、楽しむもんだと思っていたのに……


私はそんなことを考えながら、日が昇ったばかりで、まだ少し暗い部屋に電気を付けた。

そしてドレッサーの前に座り、戸棚から化粧道具を取り出す。


ベージュ色のファンデーションを、これでもかってくらい何回も塗り重ね、
ローズピンクゴージャスのチークを、また何回も塗り重ねる。
アイシャドーで目元を黒くし、真っ赤な口紅で唇を赤くする。

誰がどうみてもケバくて似合わないメイクをして、私は小さな溜め息を漏らした。


こんなメイク…本当はしたくない。


淡色のピンクや紫やオレンジ…
私は、ナチュナルメイクがしたにのに……!



ガチャ…――


ビックッ!





.