…わかってる。葵君は悪気があって言ってるんじゃない。
だけど、この切ない想いは何だろう…。
「武蔵は暗い真智を心配して、わざわざ探してくれる良い奴じゃねぇか。」
葵君は私の気持ちを知らないのか、ずっと武蔵のことを話し続けた。
武蔵が嫌いなわけじゃない、むしろ武蔵は優しくて思いやりのある良い人だって思ってる。
だけど…だけど…
「…じゃあ、武蔵がいなかったら葵君は私とベストカップルコンテストに出場してくれる?」
私は俯いていた顔を上げ、真っ直ぐと葵君を見つめた。
自分でも何を言っているのかわからない。
でも私は心のどこかで期待していた…。
「何を言い出すかと思えばそんなことかよ。」
すると葵君は苦笑し、私から目を逸らして前を見た。
「悪いけど俺は出るつもりねぇよ。面倒くせぇこと嫌いだし。」
"そんなこと" "面倒くせぇ"…か。
「アハハ!そうだよね!面倒だもんね!…ていうか、私何変なこと言ってんだろ。迷惑かけてごめんね!」
私は我に戻り、葵君を困らせたことに謝った。
きっと葵君、私のこと面倒な奴と思ったよね…。
言わなきゃ良かった…。
「まぁ、ベストカップルコンテストのことは武蔵に任せて、兄貴のことは俺に任せろ。」
「うっ、うん…。」
そして葵君は私の頭に軽く手を置いて、私はコクリと頷く。
この時いつも安心できる葵君の手のひらが、今日はほんの少し胸を苦しめた。

