その当時の私にとってその事実は

あまりにも悲惨なものだった。


そして私はそんな簡単に

命を投げ打った父を軽蔑した。


お葬式の場でお父さんに、

『バカじゃないの。』と言った。


それぐらいお父さんが憎かった。


どうしてそんなことで…と。


だけど、ある刑事さんが今話したことを

教えてくれた。


事件の全貌、お父さんの姿、

お父さんの刑事としての熱い想い、

そして家族を思う気持ちと、

私達へのメッセージ。


お父さんはなくなる間際に、

その刑事さんにこう告げた。


「ゆなとこうたに会ったら、

伝えてください。

お父さんとお母さんの所に

生まれて来てくれてありがとう。

君達から父さんの姿は見えなくなるけど

父さんはいつも君たちのそばにいます。


強く、懸命に生きなさい。」と。


私はその時の光景を今でも

鮮明に覚えている。


その刑事さんはお父さんの上司で、

お父さんの話にもよく出て来た、

お父さんの憧れの人だった。


その人のお陰で私は

お父さんの偉大さに気がつけた。


今でも困った時は仏壇の前に行き、

お父さんに話を聞いてもらう。


もちろん、答えは何も帰ってこないけど

それだけですっきりする。


今でも変わらずお父さんは

私の大好きな人であり、誇りなんだ。