私は、この森で覆われた湖のほとりで、ある病気の少年に出会った。
そして、休日は彼のところに遊びに行くのが慣わしになっている。

「シャーゼ!」
ささくれ状態の丸太で造られた一軒家の中に入ると
シャーゼがベッドから起き上がった。
「今日は、顔色が良いわね。」
彼の隣に置かれている棚の上に果物の差し入れを置くと
「うん、今日は朝から調子がいいんだ。」と
返事が返ってきた。

彼は、原因不明の病を患っていて、正直医者もお手上げだという。
それにいつまで生きられるかも分からないので私は常に不安を抱えている。
しかし彼は、それを承知で臆することなく明るく私に接してくれる。
そのせいか、私の方が彼から元気をもらっている気分になった。

ふと、机の上の花瓶を見ると花が萎れているのに気づいた。
「私、マウル湖で花摘んでくるわね。」
そう、シャーゼに声をかけると私は家を飛び出した。