『なんか嫌な感じがする』



「嫌な感じ、かぁ…」



「七瀬ちゃん、準備平気?」


「ひゃっ、し、春太先輩!?」


ぼー、と考え事をしていた私に春太先輩が声をかけてきた。

「はは、ごめん驚かせちゃったかな?」

さっきとは違ってにこやかな笑みを浮かべる先輩。

もう舞台前はざわついていて、そろそろ時間だと気付かされる。


…こんな綺麗に笑う人に危機意識もつなんて、馬鹿みたい。


私は再度自分に呆れつつ、

「いえ、大丈夫ですっ」

と微笑んだ。