「母さんさ、俺の実の母親知らないでしょ?」
「え、ええ」
「その母親ね、とてもいい人だった。会社のことを一生懸命考えてて、家のことも一生懸命考えてた。母さんと違って」
「私と違うって…何よ」
「母さんは俺のことなんて考えてないんでしょ?いつも会社のことしか眼中にしかない。そんな母親、一生子供に好かれないよ」
「…」
「消えて。それか、もっと家のことを考えて」
「あんたねぇ…」
「実の母さんは副社長で忙しかったのに、家で俺と遊んでくれたんだよ!てめぇはどうなんだよ!?仕事の量だって前より増えているかもしらないぜ!?俺は子供だから大人の事情なんか知らねぇよ!?でも大人だって子供のこと解ってねぇじゃん!もう少し愛してくれたってどうなんだよっ!?」
「…すごく優しいお母さんだったのね」
「ああ、あんたと違ってな」
ぎゅっと母さんは俺を抱きしめた。
「ごめんなさい。私…仕事のことしか考えてなかった。あなたのことなんて、考えてなかった。悪かったわ。これからはなるべく早く帰るようにするわ」
ねえ、母さん。俺…頑張ってみるよ。だから、見ててね。
俺が今までやってきたことはただ逃げてただけ。でも、それじゃダメなんだ。逃げるんじゃなくて堂々と立ち向かおう。