『抜け出せたね。まさかあんなに早いとは』
まあ、お前のおかげだ。
『ん?私じゃないよ』
は?お前は椎名だろ?
『…気付いてないんだ』
気付いてないって、何が。
『私は椎名じゃない。黒名だよ。椎名の…もう片方の存在』
お前も俺と同じか。俺にも私がいるんだよ。
『じゃあ同類だね。まあいいや。ちょっと暇だから付き合ってよ』
いいけど。
『うん。じゃあ話すね。
私は表情で大体人の考えていることわかるんだよね。観察力がズバ抜けていたからかな?まあそれで嫌われていたわけですよ。いじめられたりしてた』
いじめ…ねぇ…
『小学生とは思わないいじめだったよ。物を盗まれたり、ぶつけられたり…』
俺と同じだな。俺もそんないじめだったよ。
『ふふっ。私達…似ているわね。
それで…私にも親友がいたのよ。後から知ったんだけど、親友が中心としていじめてたらしいのよ。まったくやってくれるよ。それで…傷ついたわけ。いじめられるのはいいけど、親友が中心になっていたってことは辛かった。でね、親友の表情が…いつもと違うと言うか、死ねと思っている顔だった。その目はとても曇っていて…何を見ているのか解らなかった』
同じだな。
『え?』
俺にも親友がいたんだよ。それで、裏切られた。その親友も曇ってて何を見ているのか解らなかった。その後いじめにあって腐ったわけだよ。
『ふーん。私達、すんごい似てるね。椎名は傷ついても前向きだったんだよ。目を逸らしちゃダメだって。私はそれがダメだったから椎名に体を任してる。私は椎名の心の隅にいて、あなたを見ていた。あなたの顔は…無理やり現実に背を向けている顔。受け入れることができるのにまた同じことが起きたらどうしよう。そうやって悪いほうへ考えを向けていて闇の中に入ってしまった。でも、もう大丈夫ね』
え?