「ったく、お前は何で謝るんだよ」
「ご、ごめん。何か謝っちゃうんだよね…」
「お前は悪くねぇから。だからすぐ謝るな」
「うん…何か、鈴川さんって男の子みたいだね、口調が。髪の毛切ったら男の子だよ」
「うるせぇなっ。男なんかなりたくねぇよ!」
まあ…髪の毛切って下手したら男に間違えられるかもな。
椎名を見てみるとクスクス笑っていた。
「笑うなよ!」
「ご、ごめん…おもしろくてさっ」
ニコッと笑う彼女は俺のことを決して嫌っているわけではないだろう。
俺は…
「ったく…」
自分が馬鹿馬鹿しい。考えないで生きればどんなに幸せなんだろう。楽しいと思うにはどうすればいいんだか。
「鈴川さんが男の子だったら好きになっていたかも」
まだクスクスと笑っている椎名はそう言って俺を見て無邪気に笑った。
なんだ、簡単じゃないか。
楽しいと感じたならそのまま楽しいと感じていればいいじゃないか。
椎名は辛いことがあったと思う。まだ小学生なのに、何でこんなに悲しくならなきゃいけないんだと思っただろう。その辛さを乗り越えて今の椎名がいる。そうなるまで時間がかかっただろう。それか俺みたいにもう一人の自分を作ったのだろうか。俺とあいつは似ている。でも、違う点が一つある。
過去のことは忘れて今笑っているか
勝手に決め付けてしまったがたぶん合っていると思う。
「まあ…今でも好きなんだけどねっ。鈴川さんのそのまっすぐな心、好きだよ!」
逆だ逆。俺の心は曲がりすぎてそろそろ枝みたいにパキッと折れるだろう。
でも…椎名が少しまっすぐに直してくれたと思う。
「俺もお前のまっすぐな心、嫌いじゃないな」
「もー、素直じゃないんだからっ」
それは認める。