ザァっと木が揺れる音と一緒に和田はそう言った。俺のことが、「好き」と。
「…は?」
思わず心の中の言葉を出してしまった。
「だから、」
「そうじゃなくて」
何でこんな俺が好きなの?何でもっといい人を好きにならないの?
「なんで俺なの」
「なんと言うか…好きなんだよな」
何それ。わかんないよ。
「あの…俺、こーいうの初めてだからなんて答えればいいのかわからないんだけど」
「いや、今すぐじゃなくていいから。まあ、フラれても諦めないからな。それじゃ」
「あっ…」
和田はランドセルを素早く背負って教室から出て行った。
何だよ…調子狂う…
教室にぽつんと座ってる俺。
そして、さっきまで座っていて椅子が出しっぱなしの和田の席。
『俺、鈴川のこと、好きだ』
好きって…何だっけ。
誰かを好きになるって、どんな感じだったっけ。忘れちゃった。