軽い足取りで彼を席まで案内する。

お冷とメニューをテーブルの上に置く。

何でもいいから、何か喋りたいと思い口を開こうとしたら「雪絵ちゃーん!」と、他のところから名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

とりあえず「はーい!」とだけ返事をして、彼に向き直った。


「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」


そう彼に伝えると、私はその場から離れた。

彼をがジッと私のことを見ていたことには気付かずに…


「雪絵…?」


そして、彼が私の名前を微かに呟いていたことを私は知らない。