「小銭がたどり着く確率なんて低すぎる。

車の数が多い。

それに車の大きさも速度も違う。

なのに…」


「君は何か勘違いをしてないかい?


常に同じ動きをするのが流れだと思うかい?」

幸明が言う

「え?」


「流れ…と聞くと多くの人は水、特に川の流れをイメージするんだ。

統計学的には、ね。


だけど…川の流れはいつも同じじゃない。

雨や水かさによって速度も違う。

場合によっては川沿いを流れが削って川の形を変える。


だけど変わらないモノもある。」


「え?」


「車も、ね。

特に暴走族とかじゃなくて交通法規を守るドライバーたちの運転ならさらに流れも読みやすい。」


「…。


なんかすごい引っ掛かる。


なんとなく…感じるモノがあるけど…」


「それ…大事にしなよ?


感じるモノがある、それを自分なりに形にして理解できた時…


会得できる。」

「あ…ああ…。

って、考えてたのが吹っ飛んだじゃねぇか!!」


「八つ当たりは良くないよ?」

幸明が言う


「幸大…拾ってきたぞ。」


「なずな…ありがとな。」


幸大が言う


「さ…今日はこのあたりで帰ろうか。」

幸明が言う


「いや…まだ一回しか…」


「家に戻ってご褒美ダーツの時間だよ。」


「は?」

「だって…修行は終わったから。」

「な!?

まだできてないだろ…」

幸大が言う


「僕はこの修行で教えることはなくなった。


つまりは修行は終わり。

あとは君が会得できるかどうか。


修行が終わったらご褒美ダーツ。

それに君はもう掴みかけてる。

あとは掴みかけてるだけじゃなくて…掴むだけ。

さーて…帰ろう!」

「はぁ…いい加減な師匠だな。」


「これが僕流。

僕流とは即ち武神流なのさ。」

幸明が笑いながら言う