「じゃ、遠慮なく。」


フッ…


幸大を包む雰囲気が変わる


「武神流奥義…」

幸大が男の前で構えた


「な!?

奥義!?」

なずなが言う


「あの構え…まさか…」

なずなの父親が呟く



「王槌(おうつい)!!」



幸大は男の左頬を右の拳で横殴りにした


だが、誰もがその瞬間…男の左頬を大きなハンマーが殴ったような幻覚を見た



ドサッ…

男は吹き飛んだわけでもなくただ静かに横に倒れた



ビキッ…ピキキッ…

幸大の腕に痛みが走る

「ぐぁっ…いっ〜てぇ!!」


幸大が右腕を抑える


「幸大…今のは…?」

なずなが驚く

「え?」

「武神流の巫女である私さえも知らない技だが…君は確かに武神流と…」



「なずなは知らんだろう。

今のは武神流正当継承者のみが閲覧できる書物に書かれていた奥義だ。



が…なぜ君はできる?」


父親が言う


「なずな…謝っておかなくちゃいけないけど…


お前が昔持ってきた武神流の本…ずっと俺が借りパクしてた。」



「「はぁっ!?」」

なずなとすみれと父親が驚く


「わざとじゃないんだけど…なずながあの頃は数日おきに一冊ずつ持ってきてただろ?


返してって言わないし、俺の部屋に置いていくから返すの忘れてたんだよ…」