13時


「椿、なずな、すみれ。


私は少々出かけてくる。


留守は頼んだぞ。」


壮一郎が言う


「ええ。」

椿が言う




「…。

では…な。」

壮一郎は御堂の入り口を一瞥してから総本山を下りた






御堂の中


「徐々に…慣れてきた。

自分を感じられてきた。」


舌の痺れは小さくなり、匂いも薄くなり、高音は遠くに聞こえ、瞳は瞼の内側を映し、体は徐々に自分の体を感じ始めた



スッ…

幸大は静かに立ち始めた


ゆっくりと振り返り、歩く


「やっぱり…」

幸大は手を伸ばすと壁に触れた


正確にはこれ以上手が伸びないことからそこに何か…つまりは壁があると理解した


幸大はまた振り返る


「多分…なんどかあの掃除機は俺の所に来ては俺を避けてるんだろうな…

近くに来ても気づかないのか…面倒だな。


でも…」


幸大は徐々に意識を外側に向ける


あくまでも自分自身に意識を向けながら



「老師が言ってたよな…全てに流れはある。


例えばこの空間に充満している感覚を狂わす雰囲気…

舌を刺激する空気

嗅覚を閉ざす匂い

耳に障る音

闇…は流れは無いけどそれでも…闇の中でも流れはわかる…」

幸大が動き出した