小さなアパートの

小さな玄関からのびた

短い廊下を数歩歩き

右に入るとそこが、

狭くてさっぱりと片付いた

秋雄の部屋。

びっくりするほど

居心地のいい、

私達の大好きな居場所。

テレビを観ながら

コンビニのお弁当を食べ

彼はまったりと横になり、

私は座ったまま

引き続きテレビを観ていた。


秋雄の目は細くて、

私の目は近眼で、

横になっている彼の顔を

CMのたびにのぞきこんだ。

眠ってしまう事が、

さびしかったから。

寝てないよ、と秋雄は

何度も何度も言っては笑った。


何度目か、

のぞきこんだ私を抱き寄せ、

体の上にのせて長いキスをした。

くちびるを閉じたままでいると、

やさしくほぐすように

舌を差し込まれた。

開けて。

ここに入れさせて。

そう、秋雄の舌は言う。

せつなくなる。

うれしくて、

気持ちよくて、

懸命になる。


こんなキスを知ったのも、

私は秋雄が初めてだった。