「何で、そんな目でオレを見るの?」

「私の名前が種果なのか分かる?」

どうして今そんな話をすのかわからない。

「無花果(いちじく)ってあるでしょ。あれからきているの。お母さんはお父さんの心が自分にないことをずっと前から知ってた」

「お母さんの恋の花は咲かなかったけど、私はお母さんのおなかに宿った。花が咲かないまま実ったから、種果ってお母さんがつけた」

「それがなんだって言うんだ」

「お父さんの花は、あなたのお母さんが咲かせてあなたが生まれた」

種果が何をいっているのか分からない。

「私たちはね、半分だけど血が繋がっているの」

呆然とするオレの身体の下から種果はそう言って抜け出した。

「私を好きだと言ってくれて嬉しいけど、答えてあげられるのは、弟としてのあなたが好きよ」

そう言って、種果はオレを抱きしめてくれた。温かい身体にオレの目は涙が零れてきた。