玄関のドアを開けると、少しひんやりとした空気が頬を撫でた。


何時しか、季節は夏から秋に移り変わっていた。

深呼吸すると、冷たい空気が肺に染み込んだ。


すると、後ろから物音がした。振り返ると、珠姫が薄暗い玄関先に立っていた。


「珠姫…」


昨日降った雨で、地面は濡れている。
僕達の発する声は、吸い込まれて行くようだ。
そんな中で、

「私、あなたを好きになった事、後悔して無い。」


珠姫の声だけが、透き通るように響いた。