「ゼウス様!戻りました!」


数日経ち、ここは天界。俗に言う天国。


ガブリィは一番奥にある神の間に小走りで向かう。


巨大な部屋にそぐわぬ普通の大きさの神が頬杖をつきながら座っていた。


「ガブリエルよ。悪魔討伐は進んでいるか?」


ガブリエルは口ごもる。


「それが…一人逃しました」


神、ゼウスは驚く。


今、天界で一番強いのはゼウスを除き、ガブリエル。ガブリィが一番だからだ。


「剣も折られました…」


「馬鹿な!逃亡ではなく負けて来たのか!」


恥ずかしいかぎりです。とガブリィは言う。


「ウルムガルに会ったのか!?」


「いえ、違う男です。さらにその男から神にバルバトスというものの居所を尋ねろと」


ゼウスは一瞬驚愕するがすぐ普段の顔に戻し、話す。


「何故、バルバトスの事を尋ねろと…?」


「その男に言伝を頼まれまして」


「………バルバトスには私から話しておこう。言ってくれ」


わかりました。とガブリィは息を吸う。


『曲がってしまったお前を正す。いつか必ず。クリムゾンハートを侮るなよ?P・S心を奪ったところで何も、誰も思い通りにならない』


「クリムゾンハート…………!……確かめたいのだが、そやつの名は?」


「マルと言えば良いと……」


その名を聞くとゼウスはしなだれる。


「神よ!何かされましたか?」


「来るな!お前は自室で待機だ!」


ゼウスが命令するとガブリィは眼の色が虚ろになる。


「………はい………」


ガブリィはツカツカと部屋を出て行った。


「マル………お前は今も私の考えを否定するか………!」


ゼウスの声が虚しく巨大な部屋に響いた。