一瞬何が起きたか分からなくて。





気付いたら





「やっぱり具合悪いんじゃないですか…」




呆れたように、でも少し怒ったようにあたしを見下ろす真木がいた。




あたしの体はガッチリと真木に抱きかかえられていて。




視界の隅っこには投げ捨てられたバットと、転がっているボール。





「…しかも熱あがってるし」




知らないうちに額には手が置かれていて、真木がボソッとそう呟いた。






「っだ、大丈夫!一瞬ちょっとクラッとしただけだ!早く試合に…」


「戻れるわけないでしょ、…ほんとバカですね」


「バッ…」




バカとは何だ!



と言い返そうとした瞬間、フワリと体が宙に浮いて。






「…ッキャーッ!!!!」




真木がバッターボックスに入った時の、100倍くらいの悲鳴があたし達を包んだ。





今のあたしの状態。




俗に言う、お姫様抱っこ…ってやつだ。






「ちょ!!!なななな何してんだよ!?!?」




「何って。センパイを保健室に連れて行くんですけど」




「ははははなせ自分で歩ける!!!!」



「イヤです♪」




なっ!?




「おろせー!!!」


「だから、イヤですって」


「あのなっ!!!」




どんなに暴れても、真木はそんなあたしをものともせず軽々とあたしを抱きかかえたままスタスタ歩いていって。





「おいっ…!!!!」