ギュッとセンパイの手を握り、強引に店から連れ出す。





「彼氏とか勝手に言ってんじゃねーよ…
お前にはあたし以外に彼女がいるんだろ!?」




センパイを引っ張ってどこかゆっくり話せる場所はないかとズンズン歩いていると、後ろから憤慨したようなそんな声が聞こえた。





「…はぁあ!?」





足を止め振り向く。




…俺がセンパイ以外に彼女とか…ありえなすぎるだろ。





すると俺の迫力にちょっとビクッとなりながらも





「だ、だってそう言われたし…」





そんな返事が返ってきた。




…言われた?





「っこないだ真木に電話した時、知らない女子が出て言われたんだよ!
翼の彼女は自分だから、もう電話とかするなって!!」




知らない女子…?電話?





…そういえば前、音羽が勝手に俺のケータイに触ってたような…





…勝手にセンパイからの電話に出て、履歴も消されたんだな。






「…知らない間にずいぶん仲良くやってたみたいだな。家にもよく行ってるんだろ?」




俺から目を逸らしたまま、センパイがそんなことを言う。





「それは」



「あたしはずっと真木のこと考えてたのに!
真木は電話もくれないし電話してもすぐ切るし、もうあたしのことなんてどうだっていいんだろ!?」





…そう言うセンパイの顔があまりに辛そうで、寂しそうで




帰ると言って背を向けたセンパイの手をつかみ、思いきり抱き寄せた。





そのままギュッと腕の中に閉じ込める。






「…すみませんでした」






そんな辛そうな顔させて。