バイト帰り。
家が真向いな俺たちは、自然と帰り道も一緒だ。
何でか知らないけど上がる時間も一緒だし。
「今日は真っ直ぐ自分ち帰れよ。じゃーな」
音羽はバイト終わり、よくお腹すいた!と言っては俺んちに上り込んでくる。
「…翼ぁ」
家に入ろうとした瞬間呼び止められた。何、とケータイ画面から目を離さずに返事をする。
「…好きだよ」
…音羽にこう言われたのは、これで二度目だ。
一度目は久しぶりに学校帰りにバッタリ会って、彼女がいる、と言った時。
「…俺は…
センパイ以外は考えられない」
「…翼のバカ」
音羽はちょっと泣き出しそうな目で俺をキッと睨むと
「バーカ!!!」
もう一度叫んで、自分ちの方に走っていった。
バンッと勢いよく音羽の家のドアが閉まる。
…女子に告白されたのは初めてじゃない。
だけど、たぶん音羽は違う。
俺を男というよりは兄か弟か、とにかく兄弟みたいな感じに見てて、それを急に取られたもんだから混乱してるんだと思う。
…センパイと付き合うまで、彼女とか作ったことなかったし。



