『真木のブァアアアーカ!!!』
「センパッ…」
イ、と言う暇もなくブチィッと音をたてて電話が切れた。
ツー…ツー…ツー…
という機械音だけが虚しく俺の耳元で響く。
…なんとなく
原因は分かってる。
いや、なんとなくじゃない。
確実に
「…何してくれてんだよ音羽」
「はぁ?何がぁ?」
隣を歩く幼馴染を睨むと、わざとらしく間延びした声が返ってきた。
コイツ、武井音羽(タケイオトハ)。
小・中とずっと一緒だった幼馴染。高校は離れたけど、最近になって突然俺のバイト先に入ってきた。
「何がじゃねーよ!
わざとらしいこと言いやがって!」
何が我慢できない♡だ!!
「だってお腹すいたんだもん♪
ねぇ久しぶりにパスタ作ってよ?」
「無理。今それどころじゃないから」
腕に絡みついてきた音羽を引きはがして、センパイに電話をかける。
…出ないし。
「…そんなに“センパイ”が大事なの?」
「当たり前だろ」
もっかいかけるけど…やっぱり出ない。



