…とは思ったものの。
「いい部屋ですねー♪」
「…だな」
いざ今晩泊る旅館に着いて、部屋に案内されるとあたしの心臓は再びバックンバックン発作を起こし始めた。
「…センパイ?荷物置かないんですか?」
「え!?あっあぁ!おっ置く置く!!」
入口に佇んだままのあたしを不思議そうに見る真木に、慌てて部屋に上がる。
昔ながらの日本旅館の部屋からは、眼下に広がる海を存分に楽しめる様になっていた。
…今日はここで一晩過ごすんだよな。
今日はここで、真木と、二人きりで…
「センパイ!」
ドキーッ!!
「なっ!何!?」
「ちょっと早いですけどもう温泉いっちゃいますか?」
「あ、あぁ、そうだな…」
ぎこちなく頷くあたしに気付いてるのか気付いてないのか、真木はクスッと笑うと
「…しないんですか?準備」
「え!?あっあぁ!するする!!」
慌ててカバンを漁るあたしの背後で、真木がクスクス笑っている気配がする。
くそー…おもしろがられている…!!!
ていうか何でコイツはこんなに余裕なんだよ。
あたしなんて初めてのコイツとの、と、とと泊まりでこんなに緊張してるっていうのに。
…そうだよな。
真木はあたしとは違ってモテるし?
どうせこういうのも慣れてんだろ!!
そう思うと何だか切なくなるのと同時に、異様にムカついてきて。
「このヤロッ!!」
あたしは持っていたバスタオルで真木の頭を叩いた。
「痛っ!なんですか突然!!」
「ちょっとは緊張しろ!キンチョー!!!」
「は?」
余裕たっぷりに構えてんじゃねぇー!!!



