メンバーの誰も、あたしを責めなかった。
ただ泣いた。
ひたすら泣いた。
ずっとこの大会で、このチームで優勝することだけが目標で。
それだけがその頃の夢だったのに。
「勝負に勝つ奴がいれば、負ける奴も絶対いるんだって分かってる。
分かってるけど…もう怖かった。
死ぬほど辛い練習して、死ぬほど頑張っても、もしそれがまた叶わなかったら?って考えたら…
もう、がんばるのが怖くなった」
真木は何も言わない。
でも真剣に、話を聞いてくれているのが分かる。
「でも、昨日小学生たちと初めて稽古して…
思い出したんだ。
ただ純粋に、楽しくて剣道をやってた頃。負けることなんて考えずに、ただひたすらに剣道やってた頃を。
もう…逃げたくないって思った。
だからあたし
もう一度向き合いたい」
「…大学の、剣道部に入るってことですか?」
「…うん」
地元にも剣道部がある大学はある。A大にもサークルだけどあるらしい。でも。
「あたしの目標は…
ずっと剣道を教えてくれた親父だ。
親父みたいになりたいって思う。
大学で教員免許をとって、それで
道場を継ぐ」



