「何が恥ずかしいんだよ。すごいことだろ」
中学生の頃の真木、幼い。今より髪短いし。
思わずフッと笑いが漏れる。
「…俺その写真顔引きつってません?」
「え?」
…まぁそう言われれば確かに、そんな気もしなくはないけど。
「…俺。そのコンテスト、絶対最優秀賞獲れると思ってたんですよ。でもそしたら優秀賞で。
…自惚れてますよね」
はは、と自虐的に笑った真木は「できましたよ♪」とカウンター式のテーブルにお皿を置いた。
「…ナポリタン?」
見るとおいしそうに湯気をたてているナポリタンが。
玉ねぎ、ピーマン、ウインナーに。
「マッシュルームなかったんで椎茸で代用しました♪」
「…めっちゃうまそう」
「冷めないうちにドーゾ♪」
はい、と真木に渡されたフォーク。
いただきます、と手を合わせてさっそく口に運んだ。
「…うまい」
モチモチした食感の麺に、ほどよく絡んだケチャップソース。
…真木のつくる料理は、いつも優しくて、どこか繊細。
真木にしか出せない味だ。
「よかった♪」
「お前は食べないの?」
「はい、途中つまみ食いしてたらお腹いっぱいになっちゃって♪」
女子か。
「お前料理うまいけど食細いよな」
「俺、自分が食べるより人が食べるの見てる方が好きなんですよね♪」
ニコニコしながらあたしが食べるのをただ見ているだけの真木は、本当に幸せそう。
「…お前はずっとそうしてそうだな」
「え?」
「絶対なれるよ、料理人」
「…ありがとうございます」
へへ、と笑った真木はなんか飲みます?と照れくさそうに席を立った。



